10月20日午前6時、
私は神ノ浦漁港に足を運んだ。
長崎県新上五島町Sima-Bizに着任し、
定置網漁業を取材するのは初めてのことだった。
今の季節の沿岸漁業の様子を知りたいと思い、
「(株)平瀬定置」(舛田作男代表取締役)に取材を申し込んだ。
夜明け前、真っ黒に日焼けした漁師たちが無言のまま
ひょろりと長い定置網漁船に乗り込み出港した。
中通島(なかどおりじま)東岸の好漁場に
設置した大型定置網まで約10分。乗組員10人が持ち場に立ち、網を手繰り始めた。
ローラーと手で海中に投下した網を上げていくと、
魚たちの姿が目に入る。
定置網は魚の通り道に仕掛けられている。
前に進む魚の習性を研究して網の構造が考えられており、
一度、網に入ってしまうと、なかなか逃れられないのだ。
網をしぼられ、海面に追いやられた魚たちは逃げ惑うが、
最後は大きなたもですくい上げられ、船上で選別された。
ブリなどの高級魚は生かし、アジやサバなど小魚は氷締めに。
漁師たちの動きには無駄がない。
迅速な作業は、魚をいためないためと、
自らの身を守るため、けがをしないためでもある。
「うちはね、けががないのが自慢なんです。
みなよく知る人ばかりだから。大切にせんと」
舛田社長は胸を張った。
ふるさとの海に生きる事業者の誇りを感じた。
全国有数の魚種の多さを誇る長崎県・五島列島。
真冬は大型のブリで沸く、という。
「本当に豊かな海だ」
と思いつつ、東の空を見やると、
息をのむほどの美しい朝焼け。
これもまた自然の恵みだった。
「また来よう! ブリの時期に必ず」
Sima-Bizセンター長 平義彦